第52章

高木文弘視点

 闇市の外れにある廃棄された路地。夜風が吹き抜け、路地裏にこびりついた血の匂いが鼻腔を突いた。

 俺は久保涼真が足止めされた場所に立っていた。足元にはまだ乾ききっていない血溜まりが広がり、地面には生々しいブレーキ痕が幾筋も刻まれている。

「アルファ」

 野口裕史がしゃがみ込み、深く抉れた轍を指でなぞりながら険しい顔を向けた。

「かなり深い轍です。タイヤの溝も特殊で、軍用のランフラットタイヤですね。こんな装備、普通は各パックのトップ直属のガンマ親衛隊くらいしか使いませんよ」

 ガンマ親衛隊だと? たかが箱一つを奪うためだけに、こんな場所へガンマ親衛隊を差し向ける物好きが...

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