第64章

第三者視点

 取り戻した原稿のおかげで、愛美は再び安心して張り詰めた作業に没頭することができた。

 ラボに残っているのは、愛美と数人の助手だけだった。

 午後になり、菅原剛教授がひどく沈んだ顔つきで入ってきた。

 昨日に増して顔色は悪く、目の下には濃い隈が刻まれている。

「愛美くん、また問題が起きた」

 教授の声には、疲労と無力感が滲んでいた。

「ラボの共有口座がすべて、理事会によって財務審査を理由に凍結されてしまったんだ」

 愛美は手を止め、眉をひそめた。

「そんな、どうしてですか?」

「南川茜だよ」

 菅原剛は深くため息をつく。

「以前、彼女が天下りでラボの行政管理権を握った...

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