第六十五章

高木文弘視点

 背中から皮と肉が焼け焦げる異臭が鼻を突いた。

 車の破片が背骨や筋肉に深く食い込んでいるはずなのに、痛みはもう欠片も感じなかった。

 俺の全感覚は、腕の中で次第に体温を失っていく女にだけ向けられていた。

 彼女の股間からとめどなく溢れ出す鮮血が、俺のズボンと服をどす黒く染め上げていく。

 震える手でその傷口を塞ごうとしたが、血の勢いは増すばかりだった。

「愛美……目を覚ましてくれ……」

 ひび割れた声で彼女の名前を呼ぶ。心臓を素手で引き裂かれるような、途方もない無力感が俺を呑み込もうとしていた。

 もし彼女が死んでしまったら、俺も生きてはいられない。

 ただ、彼女を救いた...

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