第六十八章

三人称視点

 愛美は病室のベッドに腰掛け、虚ろな瞳で窓の外を見つめていた。

 記憶を取り戻したことは、彼女に喜びをもたらすどころか、ただ深い苦痛だけを呼び覚ました。

 両親のあの温かい胸の中が恋しい。

 まだ見ぬまま、永遠に失ってしまった我が子が愛おしい。

 もはや、このまま生き続ける理由すら見出せなかった。

 かすかにドアが開く音が響き、愛美は疲労に満ちた溜息を細く吐き出した。

「丸山大翔、今は誰とも話したくないの」

「少しだけ、一人にしておいてくれない?」

 背後からは何の返答もない。

 訝しげに振り返った愛美の視界に飛び込んできたのは、深い憂いと慈愛に満ちた顔だった。

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