第8章

高木愛美視点

 松井美玲の期待に満ちた気遣いは、まるで導火線に火がついた爆弾のようだった。

 高木文弘の疑り深い視線が、瞬時に私へと突き刺さる。

 頭皮が粟立つのを感じながら、私は慌てて首を振った。

「まさか。そんなことないよ、おばあちゃん」

 しかし、松井美玲は引き下がらない。

「でも、今のあなたの様子、妊娠の初期症状にそっくりよ。油っこいものの匂いを嗅ぐと、胸がムカムカするんじゃない?」

 その言葉が終わるか終わらないかのうちに、再び強烈な吐き気が込み上げてきた。

 必死に口元を覆うが、胃の中が激しく波打つ感覚はどうしても抑えきれない。

「ごめんなさい……」

 私は逃げ...

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