第87章
病院の廊下。高木愛美と高木文弘は向かい合って立っていた。
高木文弘はひどく緊張していた。
愛美は彼を見つめ、静かに口を開く。
「古川夫人のこと、全部聞いたわ。助けてくれてありがとう。彼女は、母の一番の親友だから」
その言葉に、文弘はふと肩の力を抜いた。
胸の奥に、じんわりと温かいものが広がる。
自分の咄嗟の行動が、まさか愛美とのこんなにも穏やかな会話をもたらすとは思いもしなかった。
もしもう一度あの時に戻ったとしても、火の中へ飛び込んだことを絶対に後悔しないだろう。
愛美は少し唇を噛み締め、彼の肩へと視線を落とした。
「背中の怪我は、もう大丈夫なの?」
文弘はてっきり、火事の際...
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