第109章

電源を落としたままの携帯電話を見つめ、指先が迷う。

 葛藤の末、私は結局そのままポケットにしまい込んだ。電源を入れたところで、どうせ坂下直樹からの着信履歴にうんざりさせられるだけだ。それに、もし坂本天宇から聞きたくもない言い訳を聞かされたら――ただでさえヒビの入った心が、今度こそ粉々に砕け散ってしまう。

 どれくらい泣き続けていただろう。涙も枯れ果て、喉はカラカラに乾き、足の痛みも限界だ。こんなボロボロの自分が情けなくて、頬を張り飛ばしてやりたい衝動に駆られる。こんな惨めな姿を晒して、一体誰の気を引きたいというの?

 しっかりしなさい、高橋真美。自分を見失っちゃだめ。私にはまだ、さくら...

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