第111章

坂本天宇は、まるで壊れ物を扱うかのように、私を慎重に助手席へと下ろした。その瞬間、ようやく彼を覆っていた殺気立った表情が和らいだように見えた。

 運転席に乗り込んだ彼は、大きく息を吐き出した。シートに背を預け、荒い呼吸を繰り返している。私を見つけ出すために、どれほどの労力を費やしたのだろう。

 一分ほどして、ようやく呼吸が整ったようだ。彼は私の方を向くと、責めるような、それでいて心配でたまらないといった瞳で問いかけてきた。

「……なんで電源、切ってたんだ」

 私は視線を逸らし、彼と目を合わせることができなかった。充電が切れたのだと適当な嘘をつく。彼は頷くだけで深くは追及せず、黙って車...

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