第124章

きっと、お酒のせいだ。以前の私なら、こうして彼に抱きかかえられているだけで、羞恥心で爆発していたに違いない。けれど今は、不思議と心が凪いでいる。歩けないのだから彼に運んでもらう必要がある、うん、これは正当な理由だ──そう、自分自身に言い聞かせていた。

 その時、耳障りな電子音が空気を切り裂いた。せっかくの雰囲気に水を差されたと思い、私は非難がましい視線を坂本に向ける。てっきり彼の携帯が鳴ったのだと思ったのだ。しかし、彼はきょとんとした無実の表情で私を見つめ返し、視線で「下」を指し示した。つられてその先を見ると──あれ? 私のバッグの中で携帯が震えている?

 まさか自分だったとは。...

ログインして続きを読む