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「元夫の浮気相手? ちょうどいいじゃない、かえって親しみやすいわ」

そんな笑えない冗談を飛ばす私に、伊藤香織は驚きを隠せない様子だった。彼女は私の機嫌を損ねないよう、言葉を選びながら慎重に話していたのだが、当の私がここまで吹っ切れているとは思ってもみなかったのだろう。

だが実際のところ、完全に吹っ切れたわけではない。それでも、自分の未練がましさを理由に、霧雨みよを見捨てることなんてできなかった。この子はこれまで、誰にも正しい道を教わらず、ただ生きるために多くの回り道をしてきたのだ。私を姉と慕ってくれる以上、彼女を正しい道へと導く責任が私にはある。

会社へ戻る道すがら、私は伊藤香織と昨日...

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