第20章 絶好のチャンス

私は鳴り止まない電話を見つめながら、自分の気持ちをどう表現すればいいのか分からなかった。

このタイミングの良さといったら。坂下直樹が出て行ったとたん、彼女から電話がかかってくるなんて。言うまでもなく、きっと坂下直樹が出かけた後で、すぐに状況を報告したのだろう。

私は冷静に電話に出た。「もしもし」

「何してるの?さくらはもう良くなった?」伊藤香織の声はとても軽快で、機嫌が良さそうだった。

私は心の中で歪んだ考えを巡らせた。そりゃそうよ!彼女の機嫌が悪いわけないじゃない。私と坂下直樹が揉めれば、彼女は自然と棚からぼた餅だ。

「今日もヒマなのね?朝っぱらから誘惑する暇があるなんて!」私の...

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