第52章 妹と争う

坂下直樹はさくらを連れて私の後ろに続いていた。笑顔を浮かべ、幸せな家族の姿を完璧に演じていた。

私には分かっていた。彼はただ私が嘘をついているかどうかを確かめたいだけなのだと。

でも演技力の勝負なら?

この問題なら私にはお手のものだ。

あるオーダースーツの専門店に入り、ショーケースに並んだスーツを一瞥した。「すみません、以前こちらでオーダーしたスーツなんですが...」

私が言い終わる前に、店員が嬉しそうに駆け寄ってきた。「高橋さんですよね?スーツを取りに来られたのですか?」

私は笑顔で頷いた。すると坂下直樹は一瞬驚いたような顔をした。

「ご用意してあります。一つ大きいサイズにし...

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