第54章 すべてのものは他人のもの

一度何かが心にひっかかると、私は一晩中眠れなくなる。

早朝から急いでオフィスへ向かい、すぐに田中進を呼びつけた。

「西村慧子ってどういう状況なの」

田中進は事実をそのまま説明した。「ただの取引先です。ただ、よく坂下社長とプライベートで食事をしているようですが」

「わかったわ、もう大丈夫よ。仕事に戻って」私は田中進を追い返した。

田中進の言葉から、私はもう一つの真実を理解した。西村慧子が積極的に坂下直樹に接触しているのだ。明らかに、この女は坂下直樹に目をつけ、彼を手に入れようとしている。

あの日二人を見かけた光景を思い返し、心の中でますます確信した。坂下直樹も決して無関心ではない。...

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