第55章 再びその男に会う

私は義母に電話をして子供を迎えに行ってもらい、一人で川辺へ向かった。思考は絶えずあの日、川の水に飛び込んだ場面へと戻る。今も川に飛び込んで冷静になりたいと言ったら、きっと嘲笑されるだけだろうか。

今や、会社は空の殻になってしまった。

資金は全て移され、さらには坂下直樹に大きな会社まで稼がせてしまった!

そして私は、何も持っていない。

なぜ前には気づかなかったのだろう、坂下直樹がこれほど薄情なことに。

なるほど、坂下あゆみが私に向かって吠え、門には入ったものの門の中の人間ではないと嘲笑する勇気があるわけだ。

私も一度狂ってみたい。

坂下直樹が好き勝手するなら、私もバーに行って踊り...

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