第72章

私は乱れた思考を振り払い、坂本天宇に向かって小さく頷いた。

ふと、彼に服を買ってあげるという約束を思い出した。だが、あんな騒ぎのあとでは、二人とも買い物を楽しむ気分など消え失せていた。行き先を尋ねてくる彼に「帰りたい」と告げると、彼は素直に私を家まで送り届けてくれた。

余計なトラブルを避けるため、自宅から少し離れた場所で降ろしてもらうよう頼んだ。坂本天宇は何も詮索せず、私の言葉通りに車を停めた。

服の量が多すぎたので、着替えを二組だけ抜き出し、残りはとりあえず坂本天宇の車に置かせてもらうことにした。

実家に戻ると、両親は私を見て大いに喜び、その身なりを褒めてくれた。

母は慈愛に満ち...

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