第90章

物語に深く聞き入っていただけに、霧雨みよが急に口をつぐんだことがもどかしい。「続きは?」私は彼女を促した。

 霧雨みよは私を背中から下ろすと、バツが悪そうに私を見つめた。「もう限界……重くて。お姉ちゃん、自分で歩ける?」

 私は黙って頷いた。涙の跡が残る霧雨みよの顔を見て、それ以上問い詰めるのはやめた。きっと、思い出すだけでも辛い記憶なのだろう。生まれ育った家から逃げ出すため、学業を全うするため、そして何より、飢えずに生きていくため。そんな霧雨みよを、誰が責められるというのだろうか。

 それからは無言のまま歩き続け、大学の正門まで辿り着いた。別れ際になってようやくここへ来た本来の目的を...

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