第91章

すべてを悟った私は、坂下あゆみの周囲に視線を走らせた。坂下直樹が不在の今、先ほどの彼女の言葉通りにするには、証拠映像を撮る携帯電話が不可欠なはずだ。

 部屋の隅。そこには予想通り、レンズをこちらに向けたまま立てかけられた携帯電話があった。

「食べたかったら自分で作って。私はもう済ませたから。ああ、それと……」

 私は歩み寄り、隠された携帯電話のレンズを指差して冷ややかに告げる。

「その角度だと、あなたの顔が歪んで映るわよ。不格好ね」

 言うだけ言って、私は自室へと戻った。リビングでは、図星を突かれた坂下あゆみが火がついたように喚き散らしている。

 罵声が聞こえてくる。「坂下家の人...

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