第93章

車を降りると、私は迷わずその車へと歩み寄り、ウィンドウをコンコンと軽く叩いた。

 ウィーンという音と共にウィンドウが下りていく。運転席に座っていたのは、無精髭を生やした中年の男だった。見るからにうだつの上がらなそうな風貌だ。男は私など知らないという顔を装い、白々しく尋ねてきた。

「何か用ですか?」

 私は両手を窓枠に掛け、ぐっと身を乗り出した。満面の笑みを浮かべて問いかける。

「このところ、ずっと私を付け回して何を撮ったのかしら? 成果を見せてくれない?」

 その言葉を聞いた瞬間、男の顔色がさっと変わった。慌ててエンジンをかけ、逃走を図ろうとする。だが、彼がアクセルを踏むより早く、...

ログインして続きを読む