第96章

坂本天宇は眉をひそめたが、何も言わなかった。無視されたと悟ったのか、その好色そうな老人はターゲットを私に変えて視線を向けてくる。だが、その視線が私に届くより早く、坂本天宇がすっと横へ踏み出し、私の前に立ちはだかった。その澄んだ瞳は、敵意を隠そうともせず、不躾な老人を射抜くような眼差しで見据える。

老人はバツが悪そうに苦笑いを浮かべると、私たちへの興味を失ったようだ。再び隣の背の高い美女に専念し、馴れ馴れしく体を触り始めた。

エレベーターが再び止まる。今度こそ目的の階だ。坂本天宇に手を引かれ、外へと出る。だがその去り際、あの老人は人目を盗むような手つきで、私に一枚の名刺を握らせてきた。さら...

ログインして続きを読む