第85章

昏睡中の三原由美は、激しい揺れの中で少し意識を取り戻した。

ぼんやりと、耳元で会話の声が聞こえるような気がした。

「俺たち、今から埠頭に向かうのか?」

「高波直俊が江下から出られる道を全部封鎖してるから、俺たちは出られない。密航するしかないんだ!親分がもう貨物船を二隻手配してくれた。お前がガキを一隻に乗せて、俺がこの女を別の船に乗せる」

「なんで一緒に送り出さないんだ?」

「親分の言うには、二人を一緒にさせちゃいけないし、同じ場所に送っちゃいけないんだ。別々に捨てて、二度と会えないようにしろってさ」

「くそっ、依頼主ひでぇな!親子引き離すって、二人の命を奪...

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