第42章 佐藤悟と犬、入ることを禁ず

彼女は枕の下から携帯電話を取り出し、約一ヶ月ほど連絡のなかった番号が表示された画面を見つめた。その瞬間、心臓が不規則に鼓動し、唇の色が白くなっていた。

指を切断ボタンに置きながらも、切った後の結果を考えると、震える手で電話に出るしかなかった。

「もしもし……」と応答する彼女の声は震えていた。

「どうしてこんなに時間がかかったんだ?」相手の声は静かだったが、それだけで彼女の呼吸が止まりそうになった。

渡辺絵里は全身を震わせながら、言葉を詰まらせて答えた。「さっきトイレにいて、気づかなくて」

「進展はどうだ」

「あと十三日で冷却期間が終わるわ。終われば離婚証明書を取るはず」

「佐藤...

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