第25章

橋野悠希は弓を下ろし、手首をぶらぶら振って独り言を漏らした。

「これ、見た目は小さいのに……引くの、けっこうキツいね!」

――いちばん弱い弓でこの反応だ。

この腕力で、リンゴなんて射抜けるわけがない。

そう思うたびに、鈴木美由紀の胸はひゅっと縮む。悠希が一言増やすごとに、恐怖が骨の髄まで染み込んでいく。

「橋野悠希、早くしてよ!」

「死」より怖いのは、「死ぬ前」のこの時間だ。

「焦らないで。ちゃんと狙わないと」

橋野悠希はくすりと笑い、雲でも眺めているみたいな顔で平然としていた。

対照的に、鈴木美由紀の額には冷や汗が滲み、こめかみをつたって落ちる。人の心を握るという点で、鈴...

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