第69章

「ユキ! 大丈夫か?」

長川貞也が息を呑むように叫んだ。彼女の身体に走る傷を見た瞬間、瞳の奥に浮かんだのは心配と、抑えきれない怒り。

橋野悠希は腹を抱え、顔面蒼白のまま唇を噛む。痛みに身を縮めながらも、必死に平静を装った。

「……病院だけは、だめ」

「どうしてだ」

「行けないの。天道の実験室に戻して」

汗で濡れた前髪が額に張りつき、肩が小刻みに震えている。そんな姿を見て、長川貞也が引き下がれるはずがなかった。

「戻して、そこで死ねって言うのか」

それ以上は言わない。長川貞也は彼女を抱き上げ、そのまま車へ押し込むと、アクセルを踏み抜いた。向かう先は長川の実家。

車内。橋野悠希...

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