第82章

涼は唇をきゅっと噛みしめた。瞳の奥では涙が今にもあふれそうに揺れているのに、それでも意地でも零そうとしない。

その姿が痛々しくて、橋野悠希は胸が締めつけられた。彼女はこういう小さな子たちに、とことん弱い。

「こんなに傷だらけなのに、しつけがどうとか関係あるの?」

「母親として最低限の責任感すらないなら、この子があなたのそばに生まれたこと自体が不幸よ」

ちょうど先生が火傷用の軟膏を持ってきて、涼の傷口にそっと塗り広げた。橋野悠希の眼差しに浮かぶのは、深い同情ではなく、淡い気遣いだけ。

「自分のこと、ちゃんと守って。危ないって思ったら、次は一度立ち止まって考えるの」

涼が探るような目...

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