第189章

ちょうどいい、腹も減っていた。

これだけ振り回されたのだ、自分で運転して帰る体力があるかどうかも怪しい。

まあいい、と彼女は諦めた。

彼女は石川秀樹の車に乗り込み、後部座席で彼の隣に座った。

彼は無言で、彼女の方からも話しかける気はない。帰宅が少し遅れるなと思いながらスマホを探そうと鞄をまさぐると、車の鍵がそこにあった。

つまり、さっきドアが開かなかったのは、単にロックを解除し忘れていただけだったのだ。

石川秀樹には間違いなく見られていたはずだ。

よりによって、彼の前でこんな醜態を晒すとは。

何より腹立たしいのは、この男がそばにいるというだけで、平常心を失ってしまう自分自身だ...

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