第23章

 はっきりと響いたその一声に、水原玲は肝を冷やした。

 すぐそばには石川秀樹が立っている。

 彼に聞こえなかったはずがない。

 玲は恐ろしくて、彼の方を見ることさえできなかった。

 幸い、水原一郎がとっさに機転を利かせた。「おばさん、妹がまたママと間違えてるよ」

 言葉は玲に向けられたものだが、実際には必死に妹へ合図を送っているのだ。

 しかし、水原千尋は具合が悪く、そこまで気が回らない。小さな顔を玲の胸に擦り寄せ、今にも泣き出しそうな表情を見せるだけだ。

 玲は平静を装い、息子に「大丈夫よ」と短く答えた。

 そして、薬を娘の口元へ運ぶ。「ほら、あーんして。お薬飲もうね。これ...

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