第285章

L市、空港の駐車場にて。

車に乗り込むと、斎藤恭介が尋ねた。

「石川社長、美夜クラブへ直行でよろしいですか」

「あぁ」

石川秀樹が短く答えた直後、携帯が鳴った。石川祖父からだ。

通話ボタンを押して耳に当てる。

「飛行機は降りたか?」

祖父の声だ。

「ええ。帰宅は少し遅れます。たぶん……」

彼が言い終わらないうちに、電話の相手が変わった。

甘く愛らしい、とろけるような声が響く。

「パパ、お土産は?」

石川秀樹の冷ややかな唇にふと笑みが浮かび、声色も優しくなる。

「どう思う?」

「あるに決まってる!」

間髪入れず、少女は続けた。

「美味しいもの?」

石川秀樹は呆...

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