第321章

「雲さんが、ここに預けていったものだよ」

そう言いながら、椎名優羽は意味ありげな視線を水原玲に投げかけた。

石川秀樹は少しばかり驚いた表情を見せた。

彼の知る限り、椎名優羽のスタジオには彼自身の作品しか置かれていないはずだからだ。

だが、そんなことはどうでもいい。

彼が気になったのは、『雲』という名前だ……。

記憶によれば、以前水原玲が気に入っていた腕時計も、その『雲』の手によるものだったはずだ。

彼は水原玲に視線を向けた。

「試着してみるか?」

「いえ、やめておくわ」

「どうしてだ?」

石川秀樹は重ねて訊いた。

彼女がそのドレスを気に入っているのは一目瞭然だった。

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