第350章

際どい一線を越えそうになった瞬間、水原玲はようやく我に返った。一体、自分は何をしているのか。

あろうことか、機内で石川秀樹と……。

彼女は慌てて彼を突き飛ばし、自分の席に戻ろうとした。その時、着陸態勢に入る旨のアナウンスが機内に流れた。

まだ彼の上から退ききれていないのに、機体が傾き始める。

それに合わせて、彼女の体も滑り落ちそうになった。

浮遊感に襲われ、考える暇もなく、彼女は咄嗟に石川秀樹の首に腕を回してしがみついた。これ以上、滑り落ちないように。

頭上から、男の低い笑い声が降ってくる。

彼女は彼をきつく睨みつけた。

「何がおかしいの?」

「別に」

素っ気ない一言が、...

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