第355章

問いかけた瞬間、彼女の心に微かな期待が芽生えた。

自分でも、何を期待しているのか分からない。彼が「好きだ」と言ってくれること?

彼にはもう、何も期待なんてしていないはずなのに。

それとも、この腕時計が本来、彼のためにデザインした誕生日プレゼントだったからだろうか。ずっと渡せずにいたその時計を、彼がどう思うのか知りたかっただけなのかもしれない。

だから、答えが欲しかった。

石川秀樹もまた、彼女の問いに意表を突かれた。その真意を測りかね、つい売り言葉に買い言葉で返してしまう。

「俺が好きだと言ったら、どうするつもりだ?」

誰かに譲るのをやめるのか?

水原玲は呆然と立ち尽くした。胸...

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