第073章

すぐに周りから母性本能をくすぐられた人々が、見かねて口を挟んだ。

「まさか子供に薬を盛られたとでも思ってるわけ？　こんな小さい子が何を知ってるって言うのよ」

「そうよ。子供に薬を盛られたって疑うなんて、あなた、この子に何か酷いことでもしたんじゃないの？　だからこんな小さい子を疑うんでしょ？」

水原心奈は一言も言い返せない。おまけに石川里見と渡辺勇介が見ている前で、子供好きという建前を保たなければならず、本性を現すわけにはいかなかった。

彼女は何か言って取り繕おうとしたが、だめだった。またあの感覚が襲ってきて、泣きながらその場を去るしかなかった。

石川里見が渡辺勇介に言う。

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