第205章

高級住宅街を抜け、一際見晴らしの良い場所に建つ瀟洒な邸宅の前に車が停まった。大旦那は運賃を支払い、ゆっくりと車を降りてインターホンを鳴らした。

邸内では使用人たちが掃除を終えていた。主が不在のため、彼らのその日の仕事はこれで終わりである。

チャイムの音に気づいた家政婦が玄関へ向かうと、そこにいたのは高橋の大旦那だった。彼女は慌てて扉を開け、恭しく丁寧に迎え入れる。

大旦那はぐるりと周囲を見渡したが、渡辺美代の姿はない。単刀直入に尋ねた。

「若奥様は?」

家政婦は正直に答える。

「奥様はもう三日もお戻りになっておりません。お電話も繋がらず、高橋社長とも連絡が取れない状態でして……私...

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