第212章

 音を聞きつけて大股で歩み寄ってきた高橋隆一を前に、家政婦は布団に寝かされた百五十センチほどのテディベアを見つめながら、まるで茹で上がった豚のレバーのように顔をドス黒くしていた。

 若社長から監視を命じられていたにもかかわらず、彼女はまたしても標的を見失ってしまったのだ。

 もぬけの殻となった大きなベッドを見下ろし、高橋隆一は眉間に深いシワを刻み込んだ。

 己のしでかした失態に、家政婦は今にも泣き出しそうだった。前回の夜逃げ騒動で山本美咲が一晩行方をくらませて以来、一歩も傍を離れるな、一階に降ろすな、外部の人間を部屋に入れるなと、若社長からあれほどきつく申し渡されていたというのに。

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