第104章 目で思いを伝える

「……いい」

藤原由真は抵抗する気配もなく、淡くうなずいた。

その返事に、九条千秋と森川汐里は同時に固まる。

視線を交わし合ったものの、どちらも言葉を挟まなかった。

藤原由真は黙って病室を出ていく。

自分でも理由は分からない。九条千秋にあれこれ指図されるのは心底不愉快なはずなのに――あの母娘のために何かできると思うと、驚くほど素直に従えてしまう。

その感覚は、九条千秋への嫌悪すら押し流していた。

藤原由真が出ていくと、病室の空気が数秒だけ静まり返った。

森川汐里が、困ったように口を開く。

「今日のあなた、ちょっと衝動的すぎたわ」

九条千秋は答えず、森川悦子の布団を丁寧に整...

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