第109章 心を込めて接する

男は二秒、沈黙した。

「会社で待ってろ。十分で着く」

九条千秋の声は硬く、拒否を許さない。

森川汐里が断るより先に、彼は通話を切った。

十分後。森川汐里は、言葉どおり現れた彼を目にした。

九条千秋は車の窓をゆっくり下ろす。

「乗れ。子どもたち、みんなお前に会いたがってる」

森川汐里はこくりと頷き、何事もなかった顔で助手席に滑り込んだ。

だが、座ってからも――いつまで経ってもエンジンがかからない。

不思議に思って横目で見ると、ちょうど九条千秋の視線とぶつかった。

珍しいほど真剣で、探るような目。心の奥を見透かされるようで、森川汐里は反射的に目を逸らす。

「……まだ出ないの...

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