第133章 キス

小野雨音は顎をすっと上げ、彼に向かって小さく頷いた。

「酒、飲む」

「何をだ。……お前、ひとりでこんな場所に来て。危ないって思わないのか」

藤原由真は不機嫌そうに彼女を見た。そこに男女の色は一欠片もない。ただ、言うことを聞かない身内――手のかかる妹か娘でも見るような目だった。

「……心配してるの?」

雨音が見上げた瞳は、涙で揺れていた。

「女の子なんだから、自分の身は守れ。こんな時間にふらふらしてたら危ない」

由真は反射的に視線を逸らす。

その目の奥にある痛みが分かってしまうからだ。報われない恋の痛み。胸がきゅっと締めつけられる。けれど、どうにもできない。

両想いなんて、こ...

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