第160章 退院

森川汐里はそう口では言いながらも、心のどこかで彼への想いと向き合うのを避けていた。だからこの胸のざわめきを「誰かが苦しむのを見るのがつらいだけ」と名づけて、蓋をする。

けれど藤原由真は、彼女が自分を気にかけてくれているのだと受け取ったらしい。途端に体まで軽くなったような顔をして、冗談めかして言う。

「……それ、俺のこと心配してる?」

森川汐里は羞恥と苛立ちを混ぜた目で睨みつけた。

「なんで私があんたを心配しなきゃいけないの。私をこんな目に遭わせたくせに。むしろ不幸になればいいって思ってる」

その「怒ってる」顔さえ、男の目には甘えた拗ねに見えるらしい。

藤原由真の口元は、どうしても...

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