第68章 彼女は森川汐里ではない

森川汐里は断ろうとした。だが口を開くより早く、耳元で低い声が落ちてくる。

「Giyaさんなら、まさかこの程度で顔を潰すようなことはしないでしょう。ちょうどいい、協業の話もできますし」

「……では、お言葉に甘えます」

仕事を盾に森川汐里を屈服させる日が来るなんて、たぶん藤原由真自身ですら想像していなかった。

藤原由真が「食事に行く」と言い、しかも相手が森川汐里だと知った瞬間、小野雨音の瞳には火花が散った。今にも森川汐里を焼き尽くしそうなほどに。

それでも雨音は体裁だけは崩さず、薄く笑って藤原由真の後ろに付く。

藤原由真の食事となれば、社長が動かないはずがない。すぐに手配が整い、一行...

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