第70章 懐に飛び込む

小野雨音は唇をきゅっと噛み、瞳の奥に渦巻く憎しみを押し殺すと、そっと手を伸ばして彼の手首の骨に触れた。

涙を湛えた目で見上げる。

「由真……まだ、忘れられないの? あの人のこと」

「余計なことを言うな」

藤原由真は雨音の手を外し、氷みたいに温度のない声で突き放した。

雨音の顔がくしゃりと歪む。

「由真、私……ずっとあなたのそばにいた。こんなに長い間、あなたは私に何も隠さなかったのに。……それでも、あの人のことがそんなに大事なの?」

「雨音。言ったはずだ。俺がお前に抱いてるのは感謝だけだ。恩人として見てる。それ以上のことには、踏み込むな」

藤原由真は眉間を指で押さえ、険しい表情...

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