第2章
天音舞視点
月光湖の氷のように冷たい水が身体に叩きつけられ、数週間ぶりに、私はようやく息ができた。
深く、深く沈んでいく。胸に刻まれた「裏切り者」の烙印が絶えず放つ灼熱を、冷たさで麻痺させていく。
水面の下では、岸から心配そうに私を呼ぶ月影零の声も聞こえない。神無月蒼真の嘘がもたらす重圧も感じない。
ああ、死ぬってこんな感じなのか。
頭上の暗い水面に、自分の姿が揺らめいていた――青白い顔、こけた頬。
まるで轢き殺された動物みたいだった。
「リーダー、あいつは中に長く浸かりすぎています」
私がようやく水面に顔を出し、喘ぐように息を吸い込むと、月影零の声が水面を渡ってきた。
「満月が近づいている。危険です」
神無月蒼真の声は心配で鋭かった。
「どのくらいだ?」
「正確に言うと、誰かが近づけば完全に獣化してしまうと脅されて」
姿を見るより先に、水音が聞こえた。神無月蒼真が捕食者のような優雅さで水に飛び込み、力強いストロークでこちらへ向かってくる。
「近寄らないで」彼の腕が私の腰に回った瞬間、私は唸った。
彼は私の抵抗を無視し、まるで重さなどないかのように岸辺へと引きずっていく。「凍えているぞ、天音舞。唇が真っ青だ」
「知ったことか」
だが、彼はもう私を水から引き上げていた。私の体はまるでぼろ人形のようにぐったりしている。月影零が毛布を用意していて、抵抗も虚しく、私はその温もりに包まれた。
崖の前哨基地に戻ると、石のテーブルに置かれた銀の小瓶がすぐに目に入った。
私の中の狼が本能的に後ずさる。「嫌だ」
「全員、外に出ろ」神無月蒼真が命じた。彼のリーダーとしての命令に、群れの戦士たちは慌てて扉へと向かう。
他の者たちが出ていくと、薬草の匂いと、言葉にならない緊張感だけが私たちと共に残された。
彼が差し出した銀の瓶は月光を捉えていた。私は素直に従うふりをしてそれを受け取った。だが、彼が道具の方へ向き直った瞬間、私は杯を部屋の向こうへ投げつけた。石の壁にぶつかって砕け散り、苦い液体がそこら中に飛び散る。
「くそっ、天音舞――」
私はすでに動いていた。ブーツに隠していた銀の短剣を手に握りしめる。刃を引き抜くと澄んだ音が鳴り、一瞬、この刃を彼の胸に突き立てたらどれほど満足だろうかと思った。
しかし、満月の光の下では、彼の感覚は私よりも鋭い。私が二歩も踏み出さないうちに彼は振り返り、目で追えないほどの速さで手を伸ばしてきた。
「ああ、どうしたらいいんだ?」彼の声には疲労と、絶望に近い何かが滲んでいた。
短剣は今や彼の手の中にあった。あまりに速く奪われたせいで、私の掌がひりひりと痛む。
「今度は何だ?なぜ毎度満月のたびに、そうやって自分を苦しめる?」
言葉では答えられなかった。代わりに、私はシャツの襟首を掴んで引き下げ、胸元を飾る盛り上がった銀の傷跡を晒した。「裏切り者」という言葉が、月光を焼印のように反射する、歪んだ金属の線で浮かび上がっている。
「これが痛むの」
私はただそう言って、傷跡の残る肉に掌を押し当てた。
彼がこれを刻んだ夜のことを思い出した。私は風禾翔を助けようとしたのだ。ライバルの群れから来た若い男性で、食料を盗んだところを捕まった。ただの食料は妹が病気で、群れに薬を買う余裕がなかったから。
クソっ。
神無月蒼真はそう唸り、すでに銀の刃を手にしていた。最下層の狼にまで手を出すとは。見下げ果てたやつだ。
刃は深く食い込み、一文字一文字が裏切りと痛みの教えだった。
神無月蒼真は私の前に膝をつき、その大きな手が、傷とは関係のない部分の胸を締め付けるような優しさで私の顔を包み込んだ。
「天音舞……」
彼の指が私の頬骨をなぞり、その感触に体が反応してしまう自分が憎かった。今でも、彼が何者かを知っていても、私の一部はその温もりに寄り添いたいと願っていた。
彼は私の両手を握りしめ、その銀色の瞳の奥で何かが砕けるのが見えた。深い悲しみのようなものが。
自分の決意が揺らぐのを感じ、それが余計に私を怒らせた。
その時、彼は全く予期していなかったことをした。
神無月蒼真はブーツに手を伸ばし、小さな銀の短剣――私のものより小さいが、同じくらい致命的な――を引き抜いた。そして躊躇なく、それを自らの胸、心臓の真上に突き立てた。
銀の傷が淡い青色の光を放ち、肉の焼ける刺激的な匂いが鼻を突いた。
「神無月蒼真、あんた、何を――」
彼は私をさらに引き寄せ、額を押し当ててきた。痛みで呼吸が浅く、速くなっている。
「これで、お前の痛みは和らぐか?」彼は囁いた。「少しでも?」
私は彼を見つめ、衝撃で言葉を失った。シャツからは血が滲み出し、心臓が鼓動するたびに銀がさらに深く肉を焼いているのがわかる。
「天音舞、お前の気持ちを消し去ることはできないとわかっている。だが頼む――もう月毒を拒むな。満月の間、獣の本能は制御不能に陥る」
彼の声に含まれた気遣いはあまりに真に迫っていて、吐き気がした。
「でも神無月蒼真」私は平坦で冷たい声で言った。「この痛みはすべて、あんたの手がもたらしたものよ」
「あんたが私の手を取って、銀の武器を使い、一筆一筆、私の心臓に『裏切り者』と刻みつけたのよ」
私が殴りつけたかのように、彼の顔が歪んだ。
「償わせてもらう」彼は必死に言った。「もう一度チャンスをくれ、いいだろう、天音舞?」
私の口から漏れた笑いは、乾いていて苦々しかった。
「償い?ハハハ……私の銀月部族の十三人の命――何で償うつもり?赤雪の夜に、誰が私の家族を虐殺したか忘れたの?」
銀の短剣はまだ彼の胸に突き刺さったままで、シャツの生地に血が染み込んでいる。彼は自分の怪我など気にも留めず、私の言葉に集中しすぎて痛みさえ感じていないようだった。
私は立ち上がり、膝をつく彼から一歩離れた。心臓が肋骨にぶつかって激しく鼓動している。
「覚えていてほしいって?」
私は声を荒らげながら続けた。
「全部覚えてるわよ、神無月蒼真。あの夜の、あんたの嘘も、策略も、流した血の一滴まで、何もかも」









