第5章

天音舞視点

崖の前哨基地の東翼は、すっかり様変わりしていた。神無月蒼真は星奏香織を私の真向かいの部屋に移した。まるで歪んだ鏡のように、彼女の部屋の窓が私の部屋の窓と向かい合っている。

私は窓ガラス越しに、彼女が新しい部屋を落ち着きなく苛立った様子で歩き回るのを見ていた。数分おきに、彼女は窓に顔を押し付け、必死な目で下の中庭を見渡している。

あの人を探してるんだ。苦々しい思いが口の中に広がる。いつだって、いつだって、あの男のことばかり……。

月影零が治療の間への護衛任務の途中で、詳しいことを教えてくれた。星奏香織は神無月蒼真に会わずに一日たりとも過ごせないらしい――いや、一時...

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