第9章
天音舞視点
龍騎久遠の血が、温かく、鉄の匂いをさせながら私の手に滴り落ちた。その血が肌に触れた瞬間、全てが爆発した。
記憶が、凄まじい雪崩のように私を襲った――今度は断片的なものではない。生々しく、残酷な細部まで描き出す、忌々しい真実の全てが。
七歳の頃。月光湖のほとり。まだ八歳になったばかりの神無月蒼真が、水際で震えていた。
「こっちにおいでよ、蒼真!」
私は笑いながら言った。すでに半ば獣化した狼の前足で、浅瀬の水を跳ねさせていた。
「水、そんなに冷たくないよ!」
「できない」彼は囁いた。銀色の瞳が恐怖に見開かれている。「元に戻れなかったらどうするの?」
私はび...
ログインして続きを読む

チャプター
1. 第1章
2. 第2章
3. 第3章
4. 第4章
5. 第5章

6. 第6章

7. 第7章

8. 第8章

9. 第9章

10. 第10章

11. 第11章


縮小

拡大