第294章

そう考えた矢先、天宮徳臣は自分が人違いをしていた可能性に思い至った。

動揺を押し殺し、彼は箱に入った指輪を取り出して早乙女正徳の目の前に突きつける。

「この指輪に見覚えは?」

早乙女正徳は顔を上げてちらりと見たが、すぐに慌てて首を横に振った。

「いや……知らん」

天宮徳臣は落胆し、心の中で首を振る。世の中そう都合よく奇跡など起きないか。

だが、この指輪は確かに早乙女楽己の手から渡ったものだ。楽己が語らず、正徳も知らないとなれば、残る可能性は白井秋葉しかいない。

彼は指輪をしまうと、冷ややかに告げた。

「早乙女さん、他に言い残したことは?」

早乙女正徳は首を振り、縋るような目...

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