第32章

長島補佐は深く頷いた。

「もちろんですとも。本当のことですよ」

 絶望の淵にいた清野雪音の心に、一筋の光が差した。彼女は瞳に涙を浮かべ、長島補佐に向かって深々と頭を下げる。

「ありがとうございます……!」

「いえいえ、清野さん、冷めないうちに召し上がってください」

 長島補佐は手を振りながらその場を後にした。去り際に小さく溜息をつく。古来より、情愛こそが人を最も迷わせるものだ。彼のように独り身でいれば、これほど煩わしい思いをせずに済むものを。

 清野雪音は天宮徳臣のオフィスがある方向を見上げた。涙に濡れたその顔には、笑みが浮かんでいた。

「徳臣兄さん……やっぱり私を許してくださ...

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