第59章

これ以上ないほど明白だった。徳臣兄さんは、最初から清野雪音を送るつもりなど毛頭なかったのだ。

執事から車のキーを受け取った雪音は、込み上げる怒りを必死に抑え込み、天宮徳臣に向かって声をかけた。

「徳臣兄さん、それじゃあお先に失礼するわ」

彼女の去り行く背中を見つめながら、早乙女珠妃は意地悪な笑みを浮かべた。

「天宮徳臣、あんたの雪音ちゃんが傷ついたみたいよ。追いかけて慰めてあげなくていいの?」

徳臣は鋭い視線で彼女を黙らせると、無言で車に乗り込んだ。

珠妃は肩をすくめる。別に彼女のせいではない。徳臣兄さんが冷血無情なだけなのだから。

病院では、坂東院長が焦燥に駆られ、院内を落ち...

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