第3章

イスレドン音楽大学の練習室で今日の課題を終え、私はヴァイオリンをそっとケースにしまった。

窓の外の陽光がブラインドの隙間から差し込み、床に幾筋もの金色の光を落としている。

「Perfetto!」

イタリア人の教授は、イタリア語でそう称賛すると、優雅に宙で指を振ってみせた。

「実に素晴らしい」

私は礼儀正しくお辞儀をして感謝を示したが、その言葉は心に少しも響かなかった。

「午後は即興演奏のワークショップに参加します」

楽譜を片付けながら私は言った。

「夜は早めに寮へ戻る予定です」

教授は満足げに頷いて部屋を出て行った。私は彼に本当のことは言わなかった。早めに寮へ戻...

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