第4章

村上裕介のアシスタントとインターンが、私のヴァイオリンと楽譜を片付けていく。スタジオの入り口に立ち、彼らが私の分身とも言える楽器を、まるで壊れ物を扱うかのように慎重に運ぶ様子を眺めていると、胸に一抹の不安がよぎった。この場所は私の世界とはあまりにも違いすぎる。

「白石さん」

黒いスーツを着た女性アシスタントが、静かに私のそばへ来た。

「村上先生が、交換生寮ではなく、スタジオのゲストルームにしばらく滞在してはどうか、と」

私は思わず眉をひそめた。

「どうして、ですか?」

「近く開催されるクロスオーバー音楽プロジェクトで、集中的なリハーサルが必要になるからだ」

背後から、村...

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