第4章
母さんの葬式の翌日、私は学校に戻らなければならなかった。児童相談所の担当者は、私の身の振り方が決まるまで「普段通りの日常」を維持する必要があると言った。
普通。私の人生のどこに、もう普通なんてものが残ってるっていうの。
黒井唄はいつもの取り巻きに囲まれて、私のロッカーのそばで待っていた。私に気づくと、彼女は完璧なまでの同情を顔に浮かべた。
「夏川雫!大丈夫?みんな、すごく心配してたんだよ」
心配、ね。
「平気よ」と、私はどうにか答えた。
「あなたって本当に健気よね」
彼女は周りに聞こえるように大きな声で言った。
「あんなに若くして親を亡くすなんて……私には想像もつかないわ」
想像できるわけない。あなたが母さんを殺したんだから。
化学の授業で、黒井唄はどういうわけか私の実験パートナーに指名された。平野さんが黒板に手順を書いているとき、黒井唄は塩酸の入ったビーカーを手に取った。
「楽しくなりそうね」と彼女は囁いた。
私が反応するより先に、彼女はビーカーを私の方へ傾けた。酸が私の左手と手首に飛び散った。
焼けた鉄を押し付けられたような激痛だった。叫び声すら上げられず、喉がひきつったような息を漏らすことしかできない。
「なんてこと、夏川雫!」
黒井唄の声は純粋な恐怖に染まっていた。
「先生!事故です!」
苦痛の中、椅子が擦れる音や人々の叫び声が聞こえた。平野さんが私を洗い場へと引きずっていき、酸が皮膚を蝕む間、私の手に水をかけ続けた。
「何があったの?」と先生は問い詰めた。
「わかりません!」
黒井唄はもう泣き出していた。
「彼女が何かを取ろうとして、倒しちゃったんです!お母さんが亡くなってから、ずっと上の空で」
母さんの死を、自分の仕業の言い訳に使うなんて。
保健室の先生が来て、それから救急隊員が来た。酸で皮膚が焼き尽くされた私の手は、生の肉のようだった。
「事故だったんです」
黒井唄は心配に震える声で彼らに告げた。
「最近、彼女、ちょっと普通じゃないから」
痛み止めを打たれていても、私は真実を叫びたかった。でも、誰が私の言うことなんて信じてくれるだろう?
化学熱傷が治るのに一週間かかり、手には赤く醜い傷跡が残った。私は常に包帯を巻き、字を書くことさえ拷問になった。
パーティーの二日前、放課後の駐車場で黒井唄に呼び止められた。駐車場は空っぽで、他の生徒はもう誰もいなかった。
「夏川雫!待って!」
振り返ると、彼女がこちらへ駆け寄ってくるのが見えた。手の中で何かがきらりと光っている。刃を剥き出しにしたナイフだった。
逃げなきゃ。逃げないと。
でも、足が鉛のように重かった。
「あなたに渡したいものがあるの」
彼女は甘い声で言った。
「卒業祝いよ」
「黒井唄、やめて――」
「やめてって何を?あなたに相応しいものをあげちゃダメだってこと?」
彼女は思ったより素早く動いた。左の頬に金属の鋭い感触が走り、次いで温かい血が顔を伝うのを感じた。
私は叫んだ――自分でも出せるとは思わなかった声で。
「ほらね」
彼女は一歩下がって、自分の作品を眺めるように言った。
「これで、あなたが何者なのか、みんなにわかるでしょ」
切り傷は耳元から口の端まで走っていた。あたりは血だらけだった。
「それ、見てもらった方がいいわよ」
彼女は平然と言い、刃をしまった。
「感染したら嫌でしょ」
そして彼女は、何事もなかったかのように歩き去った。
十二針。傷口を洗浄しながら、救急救命室の医師はそう言った。
「これは傷跡として残るだろう」
彼は静かに私に告げた。
「気の毒に」
傷跡。顔に。永遠に。
待っている間、携帯が絶え間なく震えていた。片桐椿からだった。
「どこにいるんだ?パーティーは明日だぞ!」
「タキシードも全部揃えたんだ」
「夏川雫?病院にいるって噂になってるけど?」
私は病院の電話から彼にかけた。
「夏川雫!ちくしょう、どこにいたんだ?」
「片桐椿、私、病院にいるの。ちょっとしたことがあって」
「病院?大丈夫なのか?」
「明日のパーティーのことなんだけど。行けない。顔に縫い傷があるの」
沈黙。長くて、ひどい沈黙。
「縫い傷?どんな傷なんだ?」
「黒井唄にカッターで切られた」
「切られた?そんなの狂ってる。どうして彼女がそんなことを?」
やっとだ。信じてくれる人がいた。
「彼女、一年中私にこんなことをしてきて――」
「待てよ、でもパーティーは明日だろ。化粧か何かで隠せないのか?」
心が沈んだ。化粧で隠せ、と。十二針の傷を。
「片桐椿、これは化粧でどうにかなるものじゃないの」
「でも、俺はもうチケットを買っちまったんだ。それに、両親もお前に会うのを楽しみにしてる」
彼のチケット。彼の両親。
「無理よ」
「無理なんじゃなくて、行きたくないだけじゃないのか?大げさに言ってるだけかもしれない」
大げさ。その言葉が、平手打ちのように響いた。
「そんなんじゃ――」
「もういいよ。忘れてくれ。一人で行く」
電話が切れた。
だが、彼は一人では行かなかった。
高橋千尋のSNSのポストには、黒のタキシードを着た片桐椿が、シルバーのドレスを着た黒井唄の隣に立っている姿が映っていた。二人は完璧にお似合いだった。
キャプションにはこうあった。
「ドタキャンされたから、アップグレード!💕」
ドタキャン。私がこれを選んだとでも言うように。
翌朝、私は彼に電話した。
「夏川雫?なあ、説明させて――」
「彼女をパーティーに連れて行ったのね」
「行けないって言ったんだろ!俺にどうしろって言うんだ?」
「私のそばにいてほしかった」
「こんなお前と一緒にいるところを見られるわけにはいかない。奨学金が……俺の将来はイメージにかかってるんだ」
イメージ。傷つけられた私の顔は、彼のイメージに悪いと。
「それで終わりってこと?」
「傷が治ったら、また――」
「やめて」
私は電話を切り、彼の番号をブロックした。
メッセージは明確だった。片桐椿でさえ、こんな私を愛することはできない。
児童相談所は、C市に里親を見つけてくれた。伊吹道子さんと伊吹光さんご夫妻――自分たちの子供はおらず、トラウマを抱えたケースの経験が豊富だという。
「新しいスタートよ」と鈴木さんは言った。
新しいスタート。すべてから遠く離れた場所。
私が旅立つ朝、黒井唄はまるで私がロッカーを空にしに来ることを知っていたかのように、校門のそばで待っていた。
「もう行っちゃうの?」と彼女は甘い声で呼びかけた。
私は歩き続けた。私の人生は、三つのゴミ袋に詰め込まれていた。
「C市!素敵じゃない。全く新しいスタートね」
私は立ち止まり、最後にもう一度彼女と向き合った。
「ねえ」
彼女は続けた。
「こんな結末になって、少し気の毒に思うわ。でも、あなたが私と同じ空間に存在する価値があるなんて思ったから、こんなことになったのよ」
彼女は私の傷ついた顔を指差した。
「でも、見てよ、うまくいったじゃない!あなたは新しいスタートを切れるし、私は……まあ、わかるでしょ、あなたを見ずに卒業年度を終えられるんだから」
私は彼女をじっと見つめ、その得意げな表情の細部まで記憶に焼き付けた。
「ようやく、ゴミが自分で出て行ってくれるのね」
彼女は笑いながら付け加えた。
私は一言も返さずに歩き去った。
でも、新しい里親の車に荷物を積み込みながら、私は自分自身に誓いを立てた。
これで終わりじゃないわ、黒井唄。これは、始まりに過ぎない。
C市の伊吹家は、これまでの暮らしとは何もかもが違っていた。清潔な白い壁、揃いのちゃんとした家具、そして隣人からのタバコの臭いがしないキッチン。
だが、そこは罠のように感じられた。
もし彼らが心変わりしたら?もし私が何かを壊して、送り返されたら?
