第6章
木野陽介の震える両手を見つめていると、氷のように冷たい怒りが胸の内に広がっていく。
私は静かに口を開いた。学生時代のいじめの日々を思い出しながら。
「あの時、たった一言でもいい、私のために弁解してくれたなら……違ったのかしら」
木野陽介の視線が揺らぎ、私と目を合わせようとしない。
「木野先生、あなた、誰に対して顔向けできるっていうの」
私の声は次第に大きくなり、感情が抑えきれなくなっていく。
「私に? ゴミ溜めで生きるために必死にもがいていた、あの私に?」
彼の肩が激しく震え出す。まるで、この詰問の重さに耐えきれないかのように。
「やめて……お願い、もう言わないで…...
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