第104章 全ネット逆転

桜井結衣の足が、リビングの真ん中で止まった。

ソファに並ぶ男女へ、凪いだ視線を滑らせる。

橘敏恵と黒崎明信の顔に張りついた「ほどよい心配」は、稽古しすぎて白けた寸劇みたいだった。

「心配してるのは私? それとも黒崎家の株価?」

結衣が遠慮なく切り捨てると、黒崎明信の表情がぴくりと固まる。

橘敏恵の手入れの行き届いた顔に、苛立ちが一瞬走った。彼女は爪切りを、バンッ、とテーブルに叩きつける。

「桜井結衣、何その態度! 私たちが善意で心配してあげてるのに、いい気になるんじゃないわよ!」

「心配?」

結衣の口元が、わずかに歪む。

「桜井家の汚水が、私をちゃんと溺れ死なせたかどうか…...

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